今回のTIPSでは、今世界で注目されている「ポジティブ・サム」という考え方について紹介致します。
ポジティブ・サム(Positive-Sum)とは、「互いが利益を得る」という考え方です。
日本人的には、近江商人が唱えた経営哲学のひとつ「三方よし」を思い出すキーワードですね。
こういった言葉が注目されるという裏側には、これまでは「互いが利益を得る」社会ではなかった。また、「三方よし」な社会ではなかったと言えます。
Win-Win(ウィンウィン)などの考え方もこれと同様ですね。こうした言葉が流行する背景には、これまでの社会がWin-Lose(ウィンルーズ)であったことが示唆されます。
では、どうして今回「ポジティブ・サム」という考え方が注目されているのかを紹介致します。
ポジティブ・サムが注目される背景
これまで、DX(デジタルトランスフォーメーション)と言われる技術革新のおかげで日々の生活が豊かになりました。
GAFAを代表とする欧米の中枢を担う企業が、多数のDXを各業界へもたらし革命を続けています。
例えば、アマゾンは本屋にDXをもたらしました。グーグルやフェイスブックは広告ビジネスにDX化をもたらし、とてつもない効率化を成し遂げました。
一方、これらの市場脅威があわられるまでに主戦場でビジネスを行なっていた、いわばアナログな企業は淘汰される一方です。
こうした背景で行われていることは、本質の価値は変わらず占有率の変動が起きたということです。
つまり、効率化による市場占有率の変化は、総数的な価値向上には繋がらないということです。
アマゾンが躍進したところで、世界の食に関する市場は人口に比例しており、市場全体が肥大化することはありません。したがって、全体の価値は横ばいしながら占有率のみが変動する、いわば「ゼロサムゲーム」と考えられます。
こうした「ゼロサムゲーム」に警鐘を鳴らす動きこそが、「ポジティブ・サム」という考え方なのです。
ポジティブ・サムとは
前述した、「ゼロサムゲーム」とは異なり、人々の生活を豊かにする考え方が「ポジティブ・サム」と考えられています。
「ポジティブ・サム」の代表例としては、サスティナブルというテーマを設定した実社会を動かす事業が挙げられます。イーロンマスク率いるテスラもまさしく「ポジティブ・サム」時代の先駆企業ではないでしょうか。彼が提唱する「とことん環境に配慮したビジネス」という点においてはこれまでの市場占有率を変動させるという意味合いは薄く、新たな価値を想像し社会全体の市場を生み出す行為に近いと考えています。
「ポジティブ・サム」とは、富の分配ではなく、富の向上と言えます。
昨今では、従来的な資本主義に変わる新しい考え方として「公益資本主義」が注目されていますね。
「公益資本主義」とは、原丈人氏が提唱する新しい資本主義の考え方です。
「公益資本主義」の基本的な考え方は、中長期的な研究開発に投資を行い、短期的な利益のみを追求するステークホルダーから卒業しようというものです。
社会のために経済活動を行う企業に対し、投機的な投資を行うことへの矛盾を突き、全てのステークホルダーにとってより良い会社とは何か、を説いた考え方です。
「公益資本主義」こそ、「ポジティブ・サム」の代表的な考え方だと筆者は考えています。
■公益資本主義についての書籍(原丈人氏著書)の紹介
21世紀の国富論
経済財政諮問会議で「日本型資本主義」による新しい経済成長モデルを提案し、50年後の日本を見据える原丈人とはいったい何者なのか。成長戦略のキーマンが唱える「日本型資本主義」とは?それは本来あるべき資本主義のスタイル「公益資本主義」だ。
皆さんの身近なところに「ポジティブ・サム」の流れを感じる事象はありますか?
是非、教えて頂ければと思います。
今回のTIPSでは、「ポジティブ・サム」という考え方について紹介致しました。
何かの一助になれば幸いです。